村上元三 『源義経』(1)

源義経〈1〉 (人物文庫)

源義経〈1〉 (人物文庫)

義経」の原作は宮尾登美子『宮尾本 平家物語』ですが、義経主従の設定はこの本からとられているそうです。また、40年前の大河ドラマ源義経』(紛らわしいな)の原作でもあります。

感想なんですが、源義経が非の打ち所のないスーパーヒーローと化していて、そういう話が苦手な私にとってはちょっとつらかった。それでも、義経が敵と戦うところは読み応えがあった。平教経とやりあう所なんかは、「もう壇ノ浦の複線を張っている!」と、かなり興奮しました。
あとは、やたらと伊勢三郎を邪険にする武蔵坊弁慶と、いつも「蟹のような顔をしている」と描かれている伊勢三郎が可笑しかった。この家来たちは生き生きとしていてけっこう好きです。大河でもこんな感じになるのかな。

『ハチロー 母の詩 父の詩』第4回 「桃の花が咲いた」

役者はいいし、所々面白いセリフもあるのに、前後の回のつながりがあまり感じられない脚本のせいか、話がぶつ切りになっていて物語へ引き込まれない。ハチロー(唐沢寿明)には知らない間に愛人が何人も出来ていてついていけないし、久(忍成修吾)も第1話でしか登場していないので感情移入が出来ず、今回紅緑(原田芳雄)に「こうなったのは全部お父さんのせいだ」と言うシーンでも説得力がなかった。悪いドラマではないのに、もったいないよ。
あと、登場人物の行動に今一つ厚みが出てないと思ったけど、それは全ての始まりでもある紅緑・シナ(原田美枝子)のなれそめの描写がぶった切られているせいじゃないだろうか。このドラマは原作にないオリジナル要素を結構出していてそれはそれで楽しいけど、同時に原作が持つ良さを出し切れていないんじゃないかなあ。第1回は本当は物語の構成の上ですごく重要になるはずだったのに、エピソードがぎゅうぎゅうづめで終わってしまったのはうーん、と思う。