第8回 「決別」

感情移入という点で、今回は今までで一番面白い回でした。父や兄にコンプレックスを抱き、公家に気使いするあまり平家一門の中で浮いた存在となっていく宗盛(鶴見辰吾)。一門のためなら鬼となるのもいとわない重盛(勝村政信)。徐々に本性を現していく頼朝(中井貴一)。人間描写が丁寧で、やっと「大河ドラマ」らしくなった気がします。そして遮那王滝沢秀明)と常盤(稲森いずみ)の別れ。遮那王が今までひたすら眉間にしわを寄せ、感情を人に見せなかったからこそ、母の前で思いの丈をぶちまける時に、ああ、遮那王は今までこんなに苦しみ、悩んできたんだ、と初めて遮那王に共感することが出来ました。笛の音と共に遮那王が消えるラストも良かった。母子の別れの余韻に浸ることができて、見ていて面白い「絵巻物ドラマ」になっていました。
それと、蓮華王院のシーン。清盛(渡哲也)は、遮那王が都から去ると知りつつ、見逃してしまう。清盛と遮那王は短い間だったとはいえ一緒に暮らした間柄だから、絆は断ち切れても、清盛は遮那王を本気で斬れないんだよね。そういえば、平治の乱の際に常盤らを救ったのも、常盤が母に似ているからだったっけ。家族の絆に弱いのは11年前と変わらない。自分が施した恩恵が刃となってかえってくる、という悲劇として清盛を描いていくみたいだね。もうちょっと権力者としての清盛も見たいけど、そういうのは鹿ケ谷あたりででてくるのかな。
また、OPで「演出:黛りんたろう」を見た時に、また余計なことをするのでは、と心配でしたが、蓮華王院で清盛がワープしたかのように消えていったところ以外は映像をきれいに撮っていて良かったです。

不満もいくつか。まず、先週から引っ張ってきた「殿上乗合事件」 *1があんなにあっさり終わるとは。前回の予告が良かったのもあって、あの事件をどう決着付けるか楽しみにしてたのに…。でも、オリジナルエピソードで通した訳を徳子(中越典子)の入内でのいざこざと絡めて説明していたから納得はしました。後、ここ数回、遮那王に関する話は「奥州へ行く」「出家」ばかりで話が進まないのも、うーんって思った。このドラマでは「出家」という言葉が一体何回出てきたのだろう。あと、常盤は今若・乙若のことも少しは気にしてくれー!

ともあれ、来週も見たい! という気にさせられました。ただ、あの予告ははっきり言って詐欺だと思うので、期待しない程度に楽しみにしています。

*1:『日本史日誌』さんが仰るには史実の「殿上乗合事件」とは別物だそうです。紛らわしいなー。